新作ソフトの発表があるたびに、ファン及びアンチファンがインターネットで大暴れするという
大手の中でも特にワケのわからないゲームメーカー、それがSquareSoftだ。
そして、その変なメーカーのゲームのなかでも特別に人気があるシリーズが「FINAL FANTASY」のシリーズなのだが、
現在このシリーズは、ゲーム中にムービーなどのデモパートが挿入されるシーンが多発するため、
これのせいか、"表現に特化している"と保守的な連中に批判される事が多い。
実際、制作関係で実権を握っている人物が、雑誌のインタビューで「ウチはビジュアル系」などと
平気で答えていたくらいなのだから、その拘りようは妙に尊敬できる。
保守派には何も考えていないように言われている本シリーズだが、その"ビジュアル系"も細部を見てみると、
それが決して非難されるようなモノではない事がよく判る。

 ここで例として挙げたいのは、シリーズ八作目の「FINAL FANTASY8」。
本作を起動すると、まず物語の重要人物や重要シーンが描かれているモノクロの静止画が表示される。
その静止画を背景にして、制作関係者の名前がアルファベットになって浮かび上がってくる。
映画でよくある、冒頭の挨拶のようなモノだ。それが終わるとタイトル画面となり、
最初からゲームを始めるか、それとも続きから始めるか、のどちらかを選択することになる。
ここで「ニューゲーム」を選んでから、始めて話題のオープニングムービーが見れるわけだ。

巨大な剣を持った二人の男が、岩場で決闘している。と、言葉で表現すると、それだけになってしまうが。
それは、そのへんのクソゲームのデモムービーによくあるような、飾りとしてしか価値のないだけのムービーなどとは
全く比べ物にならない、まさに一流のムービーだった。
凶悪な刀身が勢いよく激突し、派手な金属音が響く。このリアルな金属音だけでも、半端なメーカーには
なかなか表現できるものではない。音と映像が違和感なく交差している、完璧な表現だった。
垢がついていてあまり使いたい言葉ではないが、まさに"圧巻"だった。僕の拙い知識では、悔しいことに
この偉大な場面を他の言葉で形容することができない。正当な形容詞をつけてやれないのは、非常に残念だ。
雑誌情報によると、本作のムービーパートでのモーションキャプチャーは実際の映画俳優の動きを
取り込んだ物なのだそうだ。ということは、オープニングでのアクションシーンは、実際に二人の人間が
チャンバラしたシーンをキャプチャーして取り込んだモノ、ということになる。さすが格好良くできているわけだ。
こういったクオリティの高いムービーはゲーム中の各所に挿入されている。例えば、主人公の教官のキスティスが
保健医に呼ばれて登場するシーンがあるのだが、その場面でもさりげなくムービーパートに切り替わる。
このムービーは先ほどの決闘シーンとは違って、"ただ部屋に入ってきただけ(数秒で終了)"という平和的な内容で
一見意味がないように見えるが、"キャラクターの存在を印象付ける"という意味では大活躍している。
他にも、「背景はムービー、でもキャラクターは操作可能」というような激しく豪華なシーンなどもあり、
本作のムービーパートを使った表現は最高の質だと評価しても、正当な反論はされないだろう。
まずは、さすがSquareと言っておこう。

さて、本作はゲームソフトであるので、当然ムービーパートだけで終わったりはしない。ゲームパートも秀逸だ。
書くのを忘れていたが、本作のジャンルはRPG(ロール・プレイング・ゲーム)である。さて一般でいうRPGは、
ストーリー的な指示→移動→途中で戦闘→戦闘をクリアした場合、それによって利益(金、経験値など)を得る
→特別な場所でイベントが発生、先ほどの利益を利用する(成長したキャラクターでボスを倒す)
…何度も繰り返して最終的な目標達成…ゲームクリア
というのが普通だ。古くから多くの大作ゲームもそうだが、本作も例外ではない。
ゲームの種類によってキャラクターの成長手段・アイテムの入手方法・戦闘のルールなどが特に違い、
それの出来でゲームの評価も違う。もちろん、テキトーで下らないゲームシステムであれば、けなされる以前に
批判すらされない。…ちなみにテキトーで下らないゲームシステムのソフトが今の主流なのは秘密だ。
本作にもそういった不安があった。こういった不安は期待作ほど強烈なモノになる。
だがそれは当時のゲームファンの無意味な杞憂だったので、気にしないでよろしい。
まずキャラクターのレベルの高さが、敵の戦力の高さに比例するシステム。決して今までに一度もなかった
というわけでもないようだが、他にも敵の魔法を自分にコピーする「ドロー」というコマンドなどもあり、
敵の戦力にすぐについていける魅力的な戦闘システムは大変評価できる。
なにより話題になったのが「ジャンクションシステム」。本作では"マジックポイント"というものが廃止され、
"魔法を使用するときは、その魔法を一つ消費する"(一種類につき最高100個までストック可能)、というシステムに
なったのだが、今回はその"アイテム扱い"になっている魔法をなんと「装備」することができるというのである。
ただ装備する箇所が腕や頭ではなく、「力」だとか「HP」だとかの、つまりパラメーターその物なので、
ここではジャンクションなどといったムツカシイ言葉で表現しているらしい。
種類、数量、装備する場所などで効果が変化するという、かなり面白いシステムなのだが、
残念なのは説明書とか読まない人にはルールを覚えにくいことだろう。ウチの妹など、
覚えられなかったせいで「電波塔」まで通常攻撃だけで突っ込んでいたくらいだ。

若干の欠点はあるが、これらのシステムは練り込まれていて、非常に魅力的だ。
今なら中古で安い。もし中古がなくても、いつか再販とかされるだろう。
その時は、本作にしかない感動を知る絶好の機会だ。見逃してはいけない!


さて
こういったゲームが登場すると、保守的なゲームファンは「ムービーばっか」「映像主義」「ゲーム性が駄目の駄目」
といった調子で、やらずに頭っから非難しにかかる。残念な事に彼らは、こういった新しいタイプのエンターテイメント、
つまり「ビジュアル系」的なゲームに対しては、本質を見ようとする前に否定してしまう癖があるようだ。
彼らは、もう少し中身を見ようとするべきだろう。
閉鎖した考えでは、良い物など何も見えない。その調子では、ゲームファンとして腐っていくだけである。
さっさと順応すべきだ。

それができないなら、連中はゲームファンなどやめてしまえば良い。



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